結局やりましたよ

拍手を更新したので、毎回のようにこっちにやります。
ただ、今回は公開した拍手の通り後日談ネタバレ+捏造ネタなので人を選ぶけどね。
そもそも、奴が喋っている時点でどっかおかしいよw


【フェス後日談ネタばれ】

注:今回の拍手は激しく後日談のネタばれをしています。
  それでも良ければご覧ください。




【優也とエレボス1】

優也:あー……暇だ。なぁエレボス。
エレボス:何だ? つかいい加減妻に会わせろ。
優也:そんな事言われてもさぁ、ニュクスとエレボスが一緒になったら人類滅亡よ? どうしろと?
エレボス:黙れ、マイハニーの姿くらい見せろやボケ。
優也:てか、神話上じゃ兄弟だろ?
エレボス:ああ。
優也:…近親相姦。
エレボス:アイアンクロー。
優也:石化している俺に毎回アイアンクロー乙。
エレボス:指ずる剥けよ。
優也:ハッ、ずる剥けなのは何も指だけじゃない。
エレボス:確かにな。
優也:人の一糸纏わぬ股間を凝視するな。


【優也とエレボス2】

エレボス:しかしあれだ。お前も不幸だよな。
優也:何で?
エレボス:ちょ、お前本気で言っているの?
優也:冗談。不幸だったから後悔しないように生きてきた。
エレボス:てーか、最後に人間の集団が来てからどれ位経った?
優也:一億年と二千年前から。
エレボス:愛してる〜♪
優也:こんにちは、JA○RACです。
エレボス:ちょ、おま。


【優也とエレボス3】

エレボス:甘いな、著作権はすでに無効化されている。
優也:そんなツッコミ要らないって。はぁ……。
エレボス:どうした?
優也:いや、気がつけばそれだけ年数が経ったんだなと。
エレボス:仕方ないだろ。大体俺の存在意義はなんだ?
優也:……後日談で唐突に出て来たポッと出の『人間が死に触れようとする欲求』の塊。
エレボス:そういう事。つまりあれだ、そんだけ時間が経っても人間なんて変わりゃしなかったって事だ。
優也:言うな、マジで悲しいから。


【優也とエレボス4】

エレボス:確かお前の友人だったか? 一億年と二千年前にやって来た最後の人間の客人は?
優也:友人だが。勿論その中に友人以上の関係の人もいた。
エレボス:そいつらが言ってたよな? 『自分達の心が強くなればいつか封印が必要無くなる』云々ってよ。
優也:ああ。
エレボス:……お前ってさ、何の為に生きたんだ?
優也:言うな。


【優也とエレボス5】

エレボス:いや、ぶっちゃけ俺はお前が哀れでならないぞ。
優也:泣くぞ、石化しているからみょうちくりんな現象になるぞ。
エレボス:てーか、アレだ。冷静に考えると俺ってお前の友人に一度弱体化させられたんだよ。俺は不滅だから倒されるのはおかしいからな。
優也:ああ。まさか最後が弓で射抜くなんて偶然に感動した。
エレボス:でだ。
優也:ん?
エレボス:お前はその後知らないだろうから教えるとだ。結果的にお前を見捨てている状況で「メデタシメデタシ」とか言っていたぞ。
優也:What's!?


【優也とエレボス6】

優也:ちょっ……。
エレボス:絶句するわなそりゃー。
優也:えーっとエレボス。一つ聞く。俺の彼女はどうしたんだよ?
エレボス:あー、ある意味一番お前の望む方向だったな。仲間と決裂してもお前を生き返らせようとしたんだぞ。この色男。
優也:恋人冥利に尽きるな。
エレボス:その為に仲間にバトルロイヤルを真っ先に提案したり、負けたのに勝者の証をあのロボから強奪しようとしたり。
優也:予想外の行動にも程がある!


【優也とエレボス7】

エレボス:結論、絆って案外簡単に壊れてしまうもので、人によっては枷にしかならなくなるもの。
優也:頼むからそういう事言うな。
エレボス:まぁあれだ、どうせ一億年以上経っているから封印解いても罰は当たらんよ。
優也:そんな事を言って俺を退かそうとしてるんだろ? もう何度目の展開だ?
エレボス:お前は今まで食べたパンの枚数を覚えているか?
優也:ならば答えてやろう、俺は玄米派だ。
エレボス:聞いてねぇよ。それはそうと。
優也:ん?
エレボス:知ってる?
優也:知らない。
エレボス:話の腰を折るな。あれだ、ちょっと興味深い未来……つっても今の俺達からすれば遥か昔の事なんだけどな。とにかくそれを見つけたんだ。
優也:なんだそれ?
エレボス:いやなんだ、お前って天涯孤独に死んだと思っているだろうがな。
優也:そりゃそうだろうな、兄弟とかいなかったし。
エレボス:お前の血は実は脈々と受け継がれているぞ。当然だが云百年を軽く越えた今となっちゃ薄いにも程があるが。
優也:……はい?
エレボス:その答えを見たければお前がマイハニーを封印してから六年が経った時間軸を見せてやろう。


【Heartful Cry】

 今日はいつもどおりけたたましい目覚まし時計で目を覚ますはずだった。勿論目覚ましを付けていたし、途中で電池が切れるようなミラクルに遭遇した訳でもない。
 ただ、まだ鳴る前の時間に起こされてしまっただけだった。
「ねえお母さん、そろそろ起きてよぉ」
 ああ、またか。本当に子どもは朝が早いものだ。貴重な睡眠時間を阻害されたけれど、決して怒ったりはしない。勿論多少不機嫌になるから、と言うのもある事はある。だけど、そんな事でいちいち怒るほど小憎らしい相手ではない。
「……う、ん。分かったからちょっとどいてね」
 えー、とぶつくさ言いながら彼女は渋々私のベッドから降りていく。まったく、誰に似たのだか。

 いや、自分だった。

 誰に、とは言うまでもなかったけど、全く同じ事を私はした経験があった。今思えば本当に何をしていたんだろうと思う。
「ねえお母さーん。お腹すいたよぉ」
「はいはい分かったから」
 朝から元気だなぁと思っていたら、やっぱりそれも私に似ている。内面の血は私自身を強く受け継いだのか。
 カーテンの隙間から出てくる木漏れ日がやけに眩しい。良かった、今日は仕事が休みでも出かける用事があったから運がいい。
 よっと寝起き特有の気だるさを払拭させながら体を持ち上げる。ベッドの横にある机の上には立てかけてある二枚の写真があった。一枚は寮のみんなで十二体のシャドウを退治した時に撮った写真。あの時は無意識の内に私は彼の隣りにいたとこれを見る度に思い出して恥ずかしくなる。
 そしてもう一枚は、彼と最後に行ったデートで記念に撮ったものだ。その時はニュクスとか影時間とか、そういった事は全て忘れていて、私は普通の高校生として生活していた。
 だけど彼は違った。覚えていて、自分がもう長くないと悟ったから、数少ない自分の生きていた証を遺したんだろう。
 彼が持ってきたデジカメで、誘ってきたのに照れくさそうな表情だけど、ちゃんと腕を組んでくれて撮ってくれた。

「おはよ」

 私は在りし日の彼が私にくれた忘れ形見に挨拶をする。
 彼がくれた命であり、私の宝物、自分の娘に――。

「ねぇお母さん、今日はお出かけするんでしょ?」
「ええ、そうよ」
「どこまで?」
 娘と一緒に食べる日曜日の朝食。テレビからはこの曜日特有の番組が流れ、それをバックに今日の一日の行動を娘に話す。
「今日はね、お母さんの友達と会うの」
「んーっと、この前電話してた風花さん?」
「そう」
 興味があるのか無いのか、あれば食いつくけど無ければ父親譲りの「どうでもいいよ」が炸裂する。一度真面目に働いている順平と会った時に要らん知識を植え付けられたのだ。だけど、そんな所を抜いても父親に似ている。
「一緒に行ってもいい?」
「勿論じゃない」
 そう言いながら娘は心から嬉しい顔をしながら焼き上がったトーストを口一杯に頬張る。食欲旺盛な所も父親譲りだ、決して私の血じゃないと思いたい。
 よく食べよく寝てよく遊ぶ。そこには純粋に育った子がいる。だけど父親という存在を実感する事は無い。
 私も今のこの子の時にお父さんを失った。それに追い討ちをかけるようにお母さんが男に溺れた。だけど、今の私ならお母さんの気持ちが分かる。
 自分が愛した人がこの世からいなくなった時の辛さを身をもって実感したから。その時はたかが高校生の分際で理解出来るとは思えないだろうが、自分の回りの世界が音を立てて崩れ去ったのだ。
 その空虚となった世界を埋める為に母は他の男性を、私はその“後”で知った新しい命に注いだだけだった。
 食後の休憩を終え、ちょうどいい時間帯になったのを確認して私達は久し振りに遠出をする事となった。
 場所は言うまでもない、私と彼が過ごした一年間があったあの町へ――。

「よいしょっと……」
 ちょっと大きいリュックサックを揺らしながら、娘はあの時から何も変わってないポートアイランド駅に降りた。
 中には休日でも熱心にやっている部活に励む生徒がいる。そこにはかつて私が所属していた弓道部だと確信出来る練習用の和弓を肩にかけた生徒もいた。
私達はそれを尻目にしながら待ち合わせの場所であるポロニアンモールの今でもフェロモンコーヒーが人気の喫茶店シャガール』に向かった。

「どうでもいいけど、フェロモンコーヒーを飲んで魅力が上がるのって、通販でモテるネックレスを買って町中で歩くのと同じ原理な気がする。注文するだけで回りの視線が痛い」
 初めて彼と行ったここで開口一番に言ったセリフを思い出す。そんな彼が店員に「いつもの」と言って出て来たのがフェロモンコーヒーだったのを見て笑った記憶がある。
 約束の時間まであと五分。私達がここに来て少し経った時、店の入口に緑色の、あの時より少し伸びた髪をした一人の女性が入って来た。
「あっ、風花こっちよ」
 そう言って軽く手を振ると、彼女――風花が気付いてくれた。
「ゆかりちゃん久し振りだね」
「まあね、とりあえず何頼む?」
 居酒屋のビールじゃないけど私はフェロモンではないコーヒーを、娘はメロンソーダプリンアラモードを注文している。しかしながら我が娘、まだ来てないのに早くも次に何かを頼む気満々だ。やはり“父親の”血を濃く受け継いでいる。決して私じゃない、私であってたまるか。
 じゃあ、と言いながら風花はダージリンティーを注文する。それを横目に更に注文をしようと考える娘。あなたの胃袋はユニバースなの?

 それからしばらく他愛も無い雑談の後、かなりの食料を胃袋に沈めた。食後にちょっと暇そうにしている娘を見て、私達はシャガールを後にした。
 行き先は巌戸台分寮があった所。今は人々の憩いの場なのか、小さな公園が出来ている。娘はそこで遊んでいる女の子達と初対面にもかかわらず楽しそうに遊んでいる。
「なんかさ、彼と似ているよね」
「うん」
 それをベンチで見ながら私と風花は穏やかに話している。
「あの子にね。まだ彼がどうしているのか話してないの」
 勿論今でもあの封印を行っていると話しても理解出来ないだろう、だからお父さんは死んだと言うしかない。私自身、彼とは二度と会えないことを理解もしているから――。
「会いたいと思う事はあるの?」
 風花の質問はどうとも言えない。私自身これからずっと彼に操を立てる。それは一生変わる事は無いだろう。例え娘が大きくなってもう結婚してもいいと言われようと、彼がこの世界を守ってくれていると分かっているから。
「ごめんね、それとありがとう」
 私は風花に、皆に凄い迷惑をかけた。
「まだ、あのときの、最後の寮の日の事を?」
 私は小さく頷く。それを見て風花は大丈夫だよ、みんな分かってくれたからと励ましてくれる。彼がいなくなってから、私はみんなに助けられてばかりだった。
「だってゆかりちゃんや桐条先輩なら分かるもん。お父さんがいない子どもがどれだけ辛いのかって」
「でもさ、私はあの時みんなで戦うように仕向けたりしたじゃん」
「いいのよ」
「それに美鶴先輩に休学の事実を伏せてもらったり……」
 風花は分かっているから、と微笑んでくれる。

 あの時、三月三十一日の最後の日、私は予備校にいると嘘を付いた。
 本当は数日前にあった体調不良を感じてある病院にいた。休み時間が終わると言って切ったのは、私の診察の時間だったから。
 そこは産婦人科だった。あの日、あの時、あの瞬間、私は妊娠の事実を知った――。
 誰が父親かは言うまでもない。彼以外と経験が無かったから。
 時が止まるという事は、いつまで経っても自分のお腹の中にいる後が成長する事は無い。それがとてもかわいそうだから、何としてでも早く騒動を片付けたくて――。
 そして生き返らせるかもしれないと言う事実を聞いて、自分の過去を思い出した。父親がもしかしたら生き返らせる事が出来るかもしれない。何としてでもそれを実現させたかった。

「風花、お母さんに会いに行くのに付き合ってくれて本当にありがとう」
「だって友達じゃん、あの時、それに今もこれからもね」
 でも、彼がこの世界を守ってくれている事が分かって、決して一緒にいる事だけが良い事とは限らないから。今でも私は彼と心が繋がっているかも知れない、そんな自分勝手な解釈だけど、私はそう思う事で一歩ずつでも、前に進む事に決めた。
「ゆかりちゃんのお母さんさ、話を黙って聞いてくれたよね」
 親が親なら子も子だった。お母さんは私が彼をどれだけ愛しているのかを黙って聴いてくれて、静かにお金を渡してくれた。いつか、私が結婚をするかもしれない時にと、確執があった時にも貯めてくれた貯金だった。
 その後私は美鶴先輩を通じて一年間の休学措置を取ってもらった。勿論理由は、この子の事実を可能な限り伏せてもらうため、と言うのもあったけど、少しだけ考えたい時期があった。ルームメイトのアイギスも理解してくれた。
 そして私は苗字を変えた。変わった苗字は言うまでもない。
 一年留年して私はあの子を産んだ。何も後悔など無い。当然私や変わった苗字の先――鳴海と言う苗字を知る人間は、複雑な心境だったのかも知れない。
「風花……」
「なにゆかりちゃん?」
「私はさ、後悔してないよ」
 彼がいない事、あの時もしかしたら彼を見捨てたと同じ事をしてしまったのかもしれない。
 だけど、一つだけいえる事がある。
 その事を言ったら風花は笑って答えてくれた。

「それにこの子がいるからね、幸せだよ」


【闇】

「エレボス、俺は……」
「言うな」
 目の名前で石化している、本来なら敵対しているが気の遠くなるほどの長い年月が、俺とこいつの関係を微妙に変えてしまった。
 封印は――優也は石となりながらも涙を流し続けていた。こういう時、概念でしかなかった俺はこういう時の無力さを思い知る。
 確かに俺は妻をこの男によって封印されているが、二度と会えない訳ではない。扉の向こうからは確かに妻であり兄弟がいる事が肌で感じる。
 だが優也は違う。俺たちが見た記憶は既に気の遠くなるほど長い年月が経っていた。そこには最早かつての面影など欠片も存在してない世界がある。
 一億年、この星が出来てからまだ四十七億年というこれまでの年月を考えるとほんの一瞬でしかないかもしれない。
 だが、その間に水だけだった星は有機物が出来、そこから生物が誕生、地表は大きく形を変えた。徐々に陸へと上がる生物も増え、そこからまた気の遠くなる年月が経った。
 そうだ、恐竜が蹂躙闊歩していた時代は俺と言う概念も、ニュクスと言う概念も存在する必要が無かった。各々が自分が、家族が種族が生きる事に対して全力で前に向かっていた。

 いつからだったんだろうか、俺たちのような存在が――優也と言う犠牲が必要となった時代は?

「お前は生きた。生きて生き続けて、自分を犠牲にしてでも大事にしたいと願った人を守れた」
「ああ……」
「そしてその想いは、願いは届いた! 分かるか! お前がいつもどうでもいいと言っていたのに、一番真剣になった想いが届いたんだぞ!」
「だけど! だけどそれが原因で今を縛り付けているんだぞ! ニュクスだけじゃなかった……俺が封印したのは彼女の心だった!」
「違う!」
 何でどれだけ離れてようと想いあえる心が尊い事を知らないんだ。俺らは結構長い年月が経っているから、倦怠期という奴か。いわゆるツーカーの関係になりすぎて関係も徐々に廃れてきているって言うのに。
 いや、ここで愚痴を言っても僻みにしかならない。
「だけどこのままじゃ彼女は前へ進む事が出来ない……」
 違う、こいつは肝心な事が分かってない。
「俺が……」
 言うな、それ以上は。
「俺がいなければ良かったのに……」
 その言葉を聞いた瞬間、俺は既にそれを行っていた。例え効果が無いと分かっていても、半ば惰性で今までやっていた所があっても、今のは久々に、何千年ぶりの本気に想いっきり殴った。
「……何をやっている?」
「お前を殴った」
「そんな事をしても……」
 分かっている。分かっていてもこの究極的な馬鹿は殴る価値があった。
「お前、また手が……」
「べろんべろんだよ、ああ痛い痛い」
 そうやって手をひらひらさせていると、心なしかこいつの表情が落ちた気がする。勿論コイツは石化しているから俺の知る由も無いんだが。
「むしろあれだ、心が痛いって奴だ」
 指の痛みならどうせすぐに治る。だけど、不本意でもこいつを殴ってしまったって言う胸糞悪い結果が残る。妻と会うためにこいつにアイアンクローをした時とは次元が違う。
「確かに彼女は今後再婚……この場合は初婚も無いままシングルマザーであり続ける人生を送る。だがそれはあくまでも本人が心の底から納得をして出した答えだ。俺ら死者や概念には導けない結論だ」
 あの時の寮の騒動は納得をしたわけではない、そうだと思い込んだ末に深層意識が拒絶したようなものだ。
 未だに考えがまとまってない優也の奴を見かねて、俺はこんな提案をする。当然そんな芸当が出来るのは神様レベルの俺だから。

「行ってこい、待っててやるから」
 唐突に呟いた俺の意味が分からないのか、優也はきょとんとした顔になった。
「行ってこいよ。向こう時間一日だけなら俺もおとなしくしてやる」
「そんな事を言ってどうせ封印を」
「んな訳あるか!」
 思わず叫んでしまった。奴はこの気が遠くなるような時間で何が大切か、何を選択するのか忘れてしまったのか?
「行けってんだ。俺だって空気を詠んでいる、だからな」
 自分の使命と自分の気持ち、それは相反するものだし、もしも後者を選べば何の為に一億年以上もここにいるのかわからなくなってしまう。だけど、会いたいと願う、愛する女の下へほんの少しでも自分の存在を伝えたいと、今でも気持ちは変わらないと。
「ま、妻と会えないのはちったぁ寂しいが、それに関しては仕方ない」
「何故だ?」
 俺たちは概念であって、絆という枷になるけど人々の結びつきを必死に繋ぎ止める素晴らしいものを持ってないから。
「「いいか、俺がこんな奇特な事をするのは他ならぬお前のおかげだ。かなり長くなった時の中で、お前は俺に暇潰し程度に語りかけてくれたんだろう。それでもだ、俺はお前の話を聞いて少しずつ今の自我を持つようになった」
 そんな一年とか短い期間で人間の心を持てるほど単純なものじゃない。奴は何百年も何千年も何万年も俺に語り続けてくれた。
「その功績を少しでも還元したいんだよ」
「だが……」
「言っておくが一日だけだ! それ以上経ったりしたら容赦なく俺は扉を開けるからな!」
 多少考えていう時間があったかもしれない。だが、優也は俺の厚意に甘えてくれた。
「すまない……」
 優也は一筋の涙を流してくれた、こんな敵対関係の俺に――。
「へっ、いいって事よ」

 優也の奴は一日だけと言う短い期間だが過去に戻れた。俺は約束どおり奴を待つため、扉を開けない事にした。
 扉の向こうじゃ妻が開けようとするが、俺は扉を背にして座る事にした。

 それが約束――優也との約束だ。

 なあ、俺は間違っているのか? ここで奴との約束なんてすっぽかして人間を滅亡させる方が楽なのかも知れない。
 だけど俺は死という概念なのに、少しだけ人間の生きたいと思う気持ちに期待をしてしまう。

 現世を生きる女と、その女を愛するが故に永遠を生きる事にした男。

「なあ、エレボス。少しは人間って素晴らしいと今なら思うぞ。十年間もお前の一部も優也の中にいたなら分かるよな?」
 妻が何と言うのかわからない。だけど、少しはな。


 さて、ちょっとだけのんびり眠るとするか、約束って奴を守るためにな。

 どうせ俺たちにとっては一瞬だからな。