第二次Z再世編第31話『ジ・アンブレイカブル』

インサラウムが次の目的とする者。
それは他でもなく、クロウ・ブルースト本人。
それを分かっているからこそ、今どうするかを考えていた。
一方インサラウムは新たな人造次元獣の開発に成功していた。
ギガ・アダモン。
アークセイバー級がヴァイオレイションしたディノダモン改を一撃で屠るほどの力を持つ次元獣が完成してしまった。
そこまで来て、ユーサーは一つ考える。
その倒されたディノダモンは元は誰だったのか。
アークセイバー級であれば、自分は名前を覚えている。
だからこそ、かつての部下を目の前で実験台にした事に心を痛めていた。


そして、ジェラウドは戦うに赴く前にウェインと話していた。
ジェラウドは左頬を破界の王との戦いで傷ついた。
しかし、今は右頬にもある。
誰もが聞きたかったけど聞かなかった事。
その理由は、敗北を、死んだ妻子を忘れぬよう、自ら付けたもの。


……あ、やっと違和感に気づいた。
ジェラウドはここで先代の王は破界の王によって死んだと言っている。
けれど、以前ZEXISと戦った際に捕まえた捕虜――一応名前ありだけどモブ兵士――は、ユーサーによって殺されたと言っている。
で、前の話でその捕虜の名前を出した時にユーサーは何か首を傾げていたのが気になったんだわ。
敗北したからこそ、今のインサラウムの力がある。
ウェインはそれが一番気に入らなかった。
力の為に民の命を生け贄にしたようで。
これは確かにこの男の言うとおりだわ。
いつかウェインはジェラウドを越える騎士になるだろうと、シュバルと語り合った事があったそうだ。
そして、アークセイバーは己の信じるものの為に戦うのだと。
ウェインがそれは何なのかは不明だが、ジェラウドは国の為、マルグリットはユーサー個人の為だった。
しかし、それも変わってしまった。


変わってしまったのだ……。


そしてスコート・ラボに戻ってきたクロウは、トライア所長から提案を受ける。
格闘戦にするか、射撃戦にするか。
俺はここでは当然格闘にしておくとしましょう。
で、そこを久々に現れたカルロス。
カルロス曰く、VXの出所は教えるつもりは無いけど、一番変なのがクロウがこのスフィアを扱えている所。
クロウの強い意志に反応するという話だが、カルロスから見れば、自分の意思なんて無いに等しいとしか見えない。


クロウには主体性が無い。状況に流される事を心のどこかで自ら望んでいる。
例え、それが自分にとって不利益な事でも、行動の指針が得られれば、これ幸いとそれに乗っかかる。
何かに縛られてなければ、自分って存在を確認出来ない。だから借金を背負う。


ここが破界編の次回予告のシーンか……。
それでもクロウは、自分で決めた事はどんな不利でも何とか成し遂げようとしている。
自分らしく生きてみると、今度は自分の代わりにZONEに行った者達との約束は守れなくなる。


スコート・ラボにたどり着いたジェラウドの前に立ちはだかるのは当然ZEXIS。
しかし、その中でまたおかしな事が出てきた。
さっきも言及したモブ兵士の名前を、ユーサーも首を傾げていたが、他のアークセイバー団員も疑問を浮かべているのだ。
只の兵士の名前に何故疑問を浮かべるのか。
そう考えて、整理してみた。


まずは、モブ兵士の名前は、ケビン・マクラーレンと名乗っていた。これは間違いない。
しかし、この名前にインサラウムの誰もが疑問を浮かべる。
何故だ……?
名前。
名前がおかしいとでも?
じゃあ普通ならどんな名前だ?
そう考えて、思い出した設定があった。
インサラウムのアークセイバーは名誉姓としてテールを名乗る事が出来る。
マルグリット・ピステール。ウェイン・リプテール、シュバル・レプテール、ジェラウド・ガルス・バンテール。
例外のジェラウドの名前にあるガルスはライブラリによると御前武闘会の優勝者に送られる称号のようだ。
……何か、ケビン・マクラーレンの名字に違和感が無い?
多分「我々の国にそのような名前の者はいない」とか言いそうだ。
そうなると、ケビンが言った先代を殺したのはユーサーって言う言葉が違うのも納得出来る。
だから、残虐皇子も、もしかしたらそもそも破滅の王を倒した事があるってのも、嘘なのでは?


嘘……。


まさか、ね。
ともあれ、ジェラウドと戦ってある程度消耗させると、新型ブラスタが完成したと報告が上がる。
すぐに乗り換えようとするクロウだが、ギガ・アダモンが遮る。
しかし、それをジェラウドは止める。
人間と人間の戦いなのだ。



クロウ・ブルーストの、リ・ブラスタの最初で最後の戦いが始まろうとしていた。
スフィア抜きではジェラウドに勝てない。スフィアを使えば間違いなく敵味方関係なく襲いかかる。
ならば、使う。
クロウはクロウらしく生きる事を選んだのだ。
自らの意思を捻じ曲げようとするものを突き抜けて進む。
そう決めたのだから。


CDS――コインドロップシステムが起動した。
その名の通り、起動する時はちゃんとコインが落ちる音が出てきます。


スーパーロボットだーこれー!


遮るマルグリットを一撃で倒すものの、かろうじて意識はあった。
何故ならクロウはスフィアを使いながら意識を保っているからです。
何故かって?


金が落ちる音に反応しているからだよ。


ちゃんと今まで伏線は張られていた。
ロックオンがコインを落とすと超反応を示し、デュオがナットを落とすと何の反応もしない。
スフィアを起動する時にコインが落ちる音を出すだけで、無意識でも反応してしまうクロウの習性を利用したシステムだ。
VXの出力が一定以上になると、コックピットでコインの音が鳴ってクロウの意識を繋ぎ止める。
つまり、スフィアに囚われてながらお金の音には反応します。


最低すぎるシステムだーーーー!!


だがそれがいい
ともあれ、マルグリットは戦死したという事になった。
そうする事で、マルグリットの最後の柵をジェラウドは解放してくれた。
そして、ジェラウドも、その誇りから……。


彼が最期までユーサーに付き従ってくれていた理由は、自分の代わりに泣いてくれたから。
誰もが怒りと絶望の中にいた時、ユーサーは泣いてくれた。
それが、王として最も必要なものを持ってくれていたから。
だから……。
ジェラウドは、最期にナイトオブナイツの後任にウェインを推挙した。
最期の約束、この銭湯から帰ってきたら訓練をするという約束は、二度と果たせなくなってしまったのだった……。


一方クロウは皆からマジで呆れられていた。
お前何だよそのスフィアの克服の仕方?
金への執着心の方がスフィアの呪縛より強いってどういう事だよ?
と言う訳で、カルロスはクロウの生き様を見せて貰ったので、債権を放棄してくれました。
おかげで借金返済!


やったねクロウちゃん、借金完済されるよ!


リ・ブラスタの改修費用:200万G。


ああ、いつもの事ですね。本当に。
ちなみにパイロットを辞めれば借金を背負う必要は無いです。
ネゴシエイターも言っていた。論理的に破綻している所を勢いとキャラクターで押し通す。


トライア「どうする?」
クロウ「……やります」
トライア「声が小さいね」
クロウ「やらせてもらいます!!」


こうしてまた借金が増えるのでした。
カルロスは新たな事業をやるって事で姿を消したが、どうやらその際にVXの出所を教えてくれた。
出所は、まさかのエルガン・ローディック。
何故彼がスフィアを持っていたのか。
いずれはエルガン自身についても決着を付けなくてはならなくなりそうだ。


所が、その直後、南米のタリビア共和国の首都が衛星兵器では壊滅される事態が勃発したのでした。
借金背負っておけばCDS発動した時どうにでもなるんじゃね?