第34話『天国の雷』

レムによると、そもそもル=コボルという存在は古代人の悪しき心が集まった邪悪な精神体であるという。
……ああ、ダークブレインに近いな。
奴の最終目的は宇宙そのものの破壊。
しかし、奴は2000年前に敵対していた同胞との戦いに敗れ、星と共にバラバラに砕け散ってしまった。
だが、奴はバラバラの状態で、密かに古代人の心の中に忍び込み、母性を失った古代人は、無意識にル=コボルの『欠片』を持ったまま色んな星に伊集を始めた。
そして、ル=コボルはその欠片を探している最中。だから、欠片を見つければ良い。
全てが集まり融合されれば元の破壊衝動の塊となる。……ペルフェクティオ?
まぁ、とにかく、イディクスという組織はル=コボルの分身。
その為にアトリームとベザードは破壊された。用が済んだから。
しかし、地球はまだ破壊されない。その理由は惑星破壊兵器『プラネット・クライシス』が関連している。
そもそもプラネット・クライシスとは、惑星を時空間レベルでぶつけて破壊、消滅させる兵器である。
しかも消滅した惑星に済んでいた生物が『欠片』を持っていた場合、『欠片』が実体化して兵士となる。
その兵士達は死んでも欠片の状態に戻るだけ。死ななくてもヴェリニー、ガズムに吸収され、ル=コボルに近づく為の糧となる。
そしてル=コボルは、憑代を媒介にし、『欠片』で出来た兵士を融合させる事が出来る。
すると、その『欠片』を形成している古代人の悪意に応じた兵士よりも強力な精神生命体が生まれる。早い話がワンランク上の兵士。


科学者達の悪意から成った『欠片』を集めた存在がイスペイル。
女性や動物の悪意から成った『欠片』を集めた存在がヴェリニーと言った具合に。後者は狙っているなと思うのは気のせいか。
まぁ、とにかく奴らはル=コボルに近づく為に、欠片から成る兵士を吸収する為、欠片を集める。それを最後にル=コボルが吸収する。
分かりやすく言えば、数多の意識隊を一つにし、それが一度分割したものがイディクス。


憑代の存在は、『欠片』の強さによるもの。
プラネット・クライシスで生まれた兵士は強さが均等になるから、どうしても吸収しても少ししか吸収されない。
しかし、『欠片』の持主の中には世代を重ねて強力な『欠片』を有する人がいる。
それがレムであり、アンジェリカの父親でもあった。
しかしこれには欠点もある。
それは、レムの時同様、憑代の意識を消去するのに時間を有する事。ガズムはその時間が足りなかった為に、敗北した。


そして何故地球が滅ぼされてないか。
まず、ベザード侵略後、イスペイルは語弊があるが元の地球に、ヴェリニーはもう一つの地球に目を付けた。
元の地球に着いたイスペイルは地球を取り巻くマイナスエネルギーの多さに驚く事となる。
逆に、イスペイルはそのマイナスエネルギーが役に立たないか考えた。
その結果、ダリウスや邪魔大王国に手を貸し、地球の混乱を拡大させた。
そしてこの地球にいたレヴリアスを見て、その力――クリスタル・ハートの入手を企てた。
結果として、謀反を企てた挙句、本来の目的である『欠片』集めを忘れて――。
しかし、結局『欠片』を集めようにも、そもそも地球は古代人の末裔が移住した星ではなかった。
そしてヴェリニーは、欠片集めをしつつも、結局同様に見つからなかった。
代わりにあったのは、オーバーマンやソラノヒトの技術、そして何よりもカギ爪の男が開発していた幸せの時計画のシステム。
それを使えばル=コボルに逆らう人間がいなくなると考えたから。しかも、GE=Rの制御技術を応用させれば局所的なビッグバンも起こせる。
そうすれば、プラネット・クライシスに必要なエネルギーをビッグバンで賄えると考えた。
しかしそれもヴェリニーが倒された事で、ガズムが両者のやり残していた事をやろうとするも、それも斃された為、中途半端な結果となった。


幹部はもう既にル=コボルがめぼしい奴を吸収した為いない。
その為、現在ガズムは消滅したものの、イスペイルとヴェリニーの『欠片』は地球の周りを漂っていた。
だから新たな肉体となりうるアンジェリカたちを必要としている。
仮に再生したとしても、記憶は多少残っている物の、別人となるし、どうせ最終的に一つになるんだから、彼らを厳密に復活させる必要性も薄い。


これが、イディクスに関するレムが知ってしまった事実。
その後、レムの体調が悪くなってしまった事でドクターストップがかかった。
最も重要とされる、現在のル=コボルの居場所は分からずじまい。
代わりに、チーフやハッター達が来た月面の穴と同じ座標から、謎の通信が一瞬だけ出てきていた。
どうやら、同様に通信を受け取った白騎士曰く、タングラムが通信したのではという推測が出てきた。
タングラムとは、時空因果律制御機構。
まぁ、詳しい話はややこしくなるのでハッターから止められたが。
しかし、月面の穴に到着すると、突然ゲートが開いた。いや、それはゲートと呼べるものではない。
そこの中では暗黒が広がっており、突然要塞の中と思われる場所にワープしていた。しかも出口は無し。
それを罠と見るかどうかは別としても、シャドウVRと戦わざるを得なくなっていた。
ところが最後にダイモン・アームとダイモン・ワームが出てきて、それが何だか分からないまま倒し、奥へと進と現れたのはタングラム
タングラムによると、ゲートの発生装置のシステムを構築したのはイディクスだが、タングラムを転移の為に利用していた。
そもそもタングラムの本来の役割は、平行世界の事象交錯の統制を目的として統率されたもの。平行世界の任意の事象を入れ替える能力を持っているシステム。
まぁ、早い話が異世界同士をゲートで繋ぐ事が出来たのはタングラムのおかげって訳。
しかし、それをダイモンに奪われ、今となってはタングラム自身ダイモンに操られているかすら、見放されているかすら判別出来ない状況となっている。
ちなみに、ハッターが捕まっていたのを見かねて同断でゲートを開いて、ダリウス界から月面に飛ばしたのがタングラムによるもの。ギル・バーグが何度も使った事が関連している訳ではなかった。


そして、ル=コボルを倒さなければこの世界は崩壊するとし、彼らを一年前に何が起きたのかを見せてくれたのだった。