これは“知り合い”の話なんだが

そいつは高校三年生だった。だから何となく解るだろうが、ついこの前――一週間前に高校を卒業した。
そこで、ようやく無限フロを片付けた俺も軽く話したんだが、どうやら本人は大学で勉強するようだ。
ふむ、と俺は口には出すが納得できない表情を浮かべた。
その知り合いはお世辞にも勉強が出来ない、しかも自負するレベルと来たもんだ。そんな事があればよく大学入れたなとか、入ってからが大変だぞとか、色々と言おうとした。


――が、止めた。


「で、将来とかは決めているのか?」
「ああ」
「そうか」
「その道に入りたいから学部を調べたり、自分がどれだけ頑張ればいいのか。それらを全て比較検討して選んだんだ」
「何故そんな道を選ぶかは聞かん」
「それでいい。アンタには解らない世界だろうからな、コイツが」


どんな勉強をするのかを聞いて、またえらくニッチな世界を選んだな。とでも茶化そうと考える俺を、そいつは揺るがぬ意思で見据えていた。
ただ言える事は、俺とそいつは将来道が交わる事はないだろう。それでもある程度年の離れている弟みたいな奴を、好ましく思う。
これでも数年前までは何も考えてなかったというのに、大した変わりようだと実感した。
そんなところに、少しだけ羨ましいと感じる俺もいたのだがな。


そんな俺の知り合い。